【短編】夏空よりも眩しいきみへ
なんで……。
嘘だろ。
幻覚?
そんなことを思いながら、バクバクと胸の鼓動が大きくなる。
まさか、何度も自分に言い聞かせながら、一歩、また一歩と進むと。
それは、最近、教室で見慣れた後ろ姿だった。
夏になると、彼女が髪の毛を結ぶということはよく知っている。
ずっと見てきた。
懐かしいその場所で、昔よりも華奢に感じる肩と、うなじ、跳ねた毛先を見て息を呑む。
マジで言ってんの……。
どうしていいか分からず、突っ立っていると、ビュンと大きな風が吹いて、公園中の木々や草木が揺れて。
ゆっくりと、彼女が振り返った。
「えっ……あや、め?」
「っ」
何年ぶりかに呼ばれた、彼女の口から発せられた自分の名前。
喉の奥が熱くて、どうにかなりそう。
心臓が痛い。