【短編】夏空よりも眩しいきみへ
「……や、ごめん、あの、邪魔して」
彼女とばったり遭遇して話すことなんて、今までに何度も妄想してきたことなのに。
いざ、その場面が現実にやってくると、うまく言葉が出てこない。
やっと出てきた言葉も、よく分からないもの。
「いや、何してるの!アイス溶けるよ!早く食べなきゃ!こっち来て!」
「えっ、あっ……やばっ」
そう言われて目線を手元のアイスに向けると、確かにもう溶けかけていて、急いで、言われるがまま、彼女の座るベンチに腰を下ろして袋からアイスを取り出して口に突っ込んだ。
すぐに棒を持つ手に滴ってくる溶けたアイスの液。
「うそ、溶けるの早すぎない?昔こんな早かったっけ」
アイスの溶けるスピードのあまりの早さにそう声を漏らすと。
「ほら、急いで!落ちる!」
なんて横から急かす声がする。
「いや、急げっつったって、これ……」
「もう全部一口で言ったほうがいいよ!」
「っ、まじかよっ」
もっと昔を懐かしみながら食べるはずだったのに、結局、アイスのほとんどを一気に口の中に含んでしまった、と悲しみながら咀嚼していると、今度はキーンと頭に痛みが走る。