女嫌いの天才脳外科医が激愛に目覚めたら~17年脈ナシだったのに、容赦なく独占されてます~
 玲人くんのお陰で前の会社の給料が振り込まれていて四十万円ほどあるけれど、アパートを借りるには充分じゃない。
 そもそも定職に就いていないから借りられないだろう。ホテルに泊まるなんて贅沢はできないし。
 一生懸命生きてきたのに、どうしてこうなってしまうのだろう。
 幸せはいつも私の手から逃げていく。
 ああ……ダメ。今は悲観的なことしか考えられない。
 もう考えちゃダメだ。
 ふと空を見上げると、真ん丸の月が浮かんでいた。
「月行きの切符があればいいのに……。でも、おばあちゃん置いて月なんか行けないよね」
 自分の思考がおかしくてハハッと笑う。
 周囲の人はひとり笑っている私をおかしな目で見て通り過ぎていく。でも、全然気にならなかった。
 休む時間もなくて働くのはキツかったけど、今よりマシだ。
 玲人くんがいたし、帰る家だってあった。
 だけど、今はただただ辛い。
 ひょっとしたら、私は長い夢を見ていたのかもしれない。
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