聖母のマリ子

 エドとジャンさんのおかげで、私は遂に『目指せ100人!』の恐怖から解放されることになった。

 エドと私の結婚後から順調に出産数が増えているらしいし、魔力の放出で桃の属性が増やせることも判明した。

 この状態が長期的に続くかは不明だけど、とりあえずは聖母の役割を果たせていると言えるだろう。

 あとは王国に跡取りを残せば私の任務はほぼ完了したも同然だ。

 リリィを出産してまだ間もないが魔法のおかげでダメージはほぼないに等しい。100人産むのはさすがに嫌だが、リリィがあまりにもかわいくて、最近は子沢山なのも悪くないなと思い始めていた。

 愛する夫とたくさんの子供達に囲まれて送る人生‥‥そんな幸せ過ぎる未来を想像して、気分が穏やかになっていくのを実感する。

 想像した未来を現実にするため、私は『器具を使って注入』に二の足を踏むエドをどうにか説得し、2人目の赤ちゃんを妊娠した。

 前回の出産で過去のトラウマは完全に克服したと思っていたのだが、私は再び悪夢をみるようになっていた。

 前回同様、妊娠をきっかけに始まった悪夢。

 それは過去の記憶ではなく、古い映画を断片的に観せられているような感じで、何を意味するかもわからない。だが次第に、それがひとつの物語として繋がっていることに気がついた。

 あるひとりの女性の物語。

 その内容は、文字通り『悪夢』である。

 王によって執拗に犯され、嫉妬に狂った女達にいじめ抜かれる‥‥眠りにつく度にその女性の悲惨な人生が強制的に再生されるのだ。

 夢を見始めてから数日が経ち、その女性に子供が生まれた。『グレゴリオ』‥‥聞き覚えのあるその名前で呼ばれる赤ちゃんが、この王国の初代国王であることに気がついた。

 私はこの王国のはじまりを見せられているらしい。理由はわからないが、何かしらの意味があるのだろう。

 ただただ凄惨な映像が続くこの夢の内容に意味なんて見出だせそうもなかったが、そこには私が習った歴史では決して語られることのない重要な何かが隠されているのかもしれない。

 私は夢の内容を日本語で書き留めておくことにした。その夢日記は超絶闇展開がひたすら続き、そこに夢や希望は全くない。

 妊娠中の私にこんな悪夢を毎晩見せるなんてあり得なくないか?胎教に悪いにも程があると思うのだが‥‥お腹にいる赤ちゃんの将来が心配でしょうがない。

 だが悪夢は続きそれは佳境へと入っていく‥‥
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