聖母のマリ子
 『呪われた魂の浄化‥‥‥‥』

 復讐を終え自殺を試みたグレゴリオが黄泉の世界で交わした聖女との会話の断片‥‥夢から覚めた私は、その会話が決して夢ではないと知っていた。

 まだ夢は続くのだろう。だが、私は自分が見せられている夢の意味を、ここでようやく理解した。

 『グレゴリオの呪いを浄化すること』

 それが私の本当の使命。

 その呪いが今も続いているのだとしたら、グレゴリオの子孫である王族がそれを受け継いでいる可能性が高いとみて間違いない。

「マリコ?大丈夫か?かわいそうに‥‥また悪夢をみたんだね?」

 悪夢にうなされ夜中に目を覚ますようになった私を、エドは以前と同じように抱き締めて慰める。こんなにも優しい彼が呪われているとはとても思えない‥‥だが聖母の私がここに存在していることが、今も呪いが続いているという何よりもの証拠だった。

「大丈夫‥‥ありがとう。エド、愛してる」

「私も、愛しているよ」

 聖女を愛することがグレゴリオの禊となるならば、こうしてエドが私を愛してくれるのも呪いの浄化に繋がっているのだろうか?

 そうだったらいい‥‥と思う反面、もし私とエドが愛し合っていなかったら呪いはどうなっていたのだろうかと不安になった。

 私とエドの結婚に固執していた大司教はきっと呪いのことを知っていたのだろう。秘密にしなくてはいけない理由があったのかもしれないが、知っていたら無駄に揉めることはなかったと思うと納得はしにくい。

 この呪いがどういった類いのものかは夢の続きが教えてくれるはずだから、その詳細を無理に聞き出す必要はない。だけどこの夢を転生から3年近く経った今みせられることの意味は理解できなかった。

 妊娠が夢のトリガーとなっているのがその理由なんだとは思うけど、そもそもそれが間違っているんじゃないのか?

 情報が与えられなかったことで私とエドが結ばれなければ呪いの浄化に必要不可欠な愛情は芽生えなかった。そんなの本末転倒もいいところだし、そうなれば私が妊娠することもなく真相は闇に埋もれ、そのままこの世界は滅亡していたかもしれないのだ。

 順番が違うだろ?こんな運任せな方法じゃあまりにもリスクが高過ぎる。この仕組みを考えたのが神なのか聖女なのかは知らないが、頭が悪過ぎないか?

 意味がわからな過ぎて段々腹が立ってきた。

 まあいくら腹を立てたところで何かが変わることもなく、私はその後も夢を見続けた。
< 67 / 72 >

この作品をシェア

pagetop