復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「ギェー」

 ハッとして顔を上げた。

 遠くからだが、聞いたことのない獣のような鳴き声が聞こえる。

「で、でたぞ。ま、魔獣だ!」

 馬の嘶きと共に御者が逃げ出す音が聞こえ、さらに大きくなる鳴き声と争うような大きな物音が聞こえた。

 窓がない荷台では、外でなにが起きているのかまったくわからないし、中からは開けられない作りのため、外にも出られない。

 恐怖のあまり気が遠くなり、ディートリヒの声が脳裏に浮かんだ。

 鉄格子の前で彼は立ち上がる前に囁いたのである。

 

『利用されてくれて、アリガト。愛していたよ、ルイーズ』



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