溺愛社長の2度目の恋
私のデスクにきて、彼は天板に手を置いてしゃがみ込んだ。

「すみません、私はちょっと……」

食事に行く時間すら惜しい。
それくらい、仕事が押していた。

「ダメだ」

急に厳しい声が聞こえてきて、手が止まる。

「まともにメシ、食ってないだろ。
俺がいるときくらいちゃんとメシを食え。
そんな時間もないっていうなら、末石さんに交渉させる」

「でも……」

「社長命令」

渋っていたら彼は無理矢理私を立たせた。

「……わかりました」

ここまでされて彼の気持ちを無駄にできない。
手早くパソコンをスリープ状態にし、バッグを持った。

檜垣さんが私を連れてきたのは、いつかも来たカフェだった。

「ラッキーだな、今日のサンドイッチはローストビーフだってよ。
元気のないときはやっぱり、肉だよ、肉」

笑いながら彼は私の希望など聞かず、それをふたつ注文した。

「ちゃんと食って、ちゃんと寝ろ。
仕事に逃げるな。
天倉さんを取り戻すにしても、夏音ちゃんになんかあったら、話にならないんだからな」

「……はい」

檜垣さんの言葉はもっともすぎて、肩を丸めて小さくなった。
確かに今、私が倒れたら、有史さんを取り戻すどころではなくなる。
< 168 / 184 >

この作品をシェア

pagetop