誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
家に帰りベッドに横たわる。

4月から一人暮らしを始めたばかりだから、ここに来て少しホームシック気味だ。

帰りに寄ったコンビニ弁当にも手を付けず、ボーっと天井を眺める。

北條さんは何か食べれたのだろうか…

身体中の痛みで今夜は寝れないかもしれない。

そんな事を考えると、先程の病室でのやり取りを思い出して1人自己嫌悪する。

プリンくらい差し入れすれば良かったかもしれない。

ビニール袋の中の2つのプリンを見つめ、
今日、何度目か分からないため息を吐く。

何気なく普段は見ないTVをつける。

チャンネルのスイッチを、ベッドで寝転びながら適当に替えていく。

あっ…。
この人…あの人だ。
ニュースでは見に覚えのある病院の玄関が映し出され、レポーターがニュースを伝えている。
見出しには、『北條司 意識不明の重体』の文字

北條さんもう意識ありますよ…心菜は1人、そう思う。

芸能人か…凄い人なんだな。
 
私なんかが…彼みたいな人に会える事なんて一生に一度きりだろう。

そう思うと、どこか虚しくて…心がズキンと痛む。

TVに映し出された映像の中の北條は、今日病院で会った彼よりもクールで冷たい印象だった。

これはモテるんだろうな。
ファンもいっぱいいるし、きっと彼女の1人や2人くらい普通にいるだろう。

私なんかがコンビニのプリンを差し入れたりしなくても、きっと誰かがせっせと世話を焼いてくれるはず。

疲れ切った身体は夕飯を食べる元気も無く、気付けば意識を手放していた。
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