誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「蓮さんは誰もが羨む容姿を持っていて、才能にも満ち溢れているのに、たまに世捨て人みたいな事を言うので心配になります。
…何をそんなに恐れているんですか?」

その瞬間、
モノトーンに見えていた蓮の世界が一気に色彩をつけて輝き出す。

蓮は目を見開き心菜を見つめる。

心菜は不思議そうな目を向け小首を傾げる。

ドクンドクンと鳴り響く心臓の音がまるで、自分のものではない様に感じる。

俺が何かに恐れている?

むしろ怖いものなんて何も無いと思うほど虚無の世界で生きて来たのに…。

心菜に指摘されて、始めて自分にも感情があったんだと思うほどの胸の高鳴りを覚え、戸惑う。

「…綺麗だな。」
と、蓮は心菜を見つめ続ける。

「本当に…綺麗です。」
心菜は夜景に目を向けそう言う。

「綺麗なのは、心菜だ。」
と、蓮は知らしめる。

「はい⁉︎…どうしちゃったんですか?
それを言うなら綺麗なのは蓮さんですよ。
私なんてそこら辺に転がってる小石みたいなものですから。」
心菜が慌てて否定する。

「綺麗なのは心菜の方だ。心さえも真っ白で澄んでるし、俺なんて真っ黒だ…。」

蓮はそう言って、また景色に目を移す。

「驚いたな。
この世界がこんなにも綺麗だったなんて知らなかった。」

「本当ですよね。キラキラ輝いて宝石箱みたいです。」

「…連れて来てくれて、ありがとう。」

心菜は蓮が同じように感動して、喜んでくれた事に嬉しくなる。

「こちらこそ。喜んで頂けて良かったです。」

しばらく2人は、そこに置かれた白いベンチに座り、時を忘れて景色を楽しむ。
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