麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
朝食が終わると、暁成はスーツに着替えた。
長身で痩躯、それでいて、週二日ジムに通い汗を流す暁成のスーツ姿にはいつも惚れ惚れしてしまう。
左腕に腕時計を嵌める仕草はどこかの俳優かと見間違えそうになる。
ゾクゾクするほどの色気を感じる。
(あ、そうだったわ!)
のんびり見惚れている場合ではなかった。
思い出した櫻子は、昨夜クリーニング屋から引き取ったワイシャツを暁成に見せた。
「あの、暁成さん。昨日クリーニング屋さんから戻ってきたワイシャツなんですけど、赤ワインのシミはやっぱり取れなかったみたいで……」
「そうか……このシャツには思い入れがあったんだけどな」
暁成はワイシャツに残った赤いシミを見て、残念そうにため息を吐いた。
数日前、暁成が取引先と食事をしたレストランで、悲劇は起こった。
ウェイターが給仕する際に赤ワインの入ったグラスを誤って倒してしまったのだ。
赤ワインが暁成のワイシャツに飛び散り、赤いシミが点々とついてしまった。
このワイシャツは暁成が初任給を使い、セミオーダーメイドで購入したものらしい。ここぞという時にだけ着用する大事な品だと聞いている。
暁成はワイシャツを櫻子に返した。