ファーレンハイト/Fahrenheit
同時刻
加藤奈緒は自宅にいた。
署から捜査員用のマンションに戻る為に電車に乗ったが、積雪の影響で運行中止となり途中駅で降ろされた。
その駅から加藤の自宅までは三キロはあったが、相澤裕典と一緒に歩いて自宅まで行った。
「奈緒ちゃん、ここ、もしかして分譲?」
相澤は、濡れたコートをハンガーに掛けながら、ハンガーラックをエアコンの前に移動させている加藤に話しかけている。
「そうだよ。ローン組むの、早い方が良いと思って」
「そうなんだ」
リビングを見回す相澤は、視界に入る殺風景なリビングをキョロキョロ見回し、困惑した顔をしている。
「あのさ、女の家なのに可愛げがないとでも思ってるでしょ?」
「……そんな事ないよ」
「ふふっ、顔に書いてあるよ。ふふっ」
◇
「お風呂洗ってくる」
そう相澤に伝え、加藤は浴室に行き、シャワーを出してお湯に変わるのを待っていた時、相澤も浴室に来た事に気づいた。
「俺がやるよ」
「いいよ」
「寒いから奈緒ちゃん向こうに行って温かくしててよ」
「いいって」
「だめだよ」
相澤はスラックスの裾を捲り、靴下を脱いで浴室に入って来た。加藤の肘を掴み、「奈緒ちゃん、向こう」と頬を膨らませて言い、それを見た加藤は口元を緩めて「ありがとう」と言って、浴室を出た。
加藤奈緒は自宅にいた。
署から捜査員用のマンションに戻る為に電車に乗ったが、積雪の影響で運行中止となり途中駅で降ろされた。
その駅から加藤の自宅までは三キロはあったが、相澤裕典と一緒に歩いて自宅まで行った。
「奈緒ちゃん、ここ、もしかして分譲?」
相澤は、濡れたコートをハンガーに掛けながら、ハンガーラックをエアコンの前に移動させている加藤に話しかけている。
「そうだよ。ローン組むの、早い方が良いと思って」
「そうなんだ」
リビングを見回す相澤は、視界に入る殺風景なリビングをキョロキョロ見回し、困惑した顔をしている。
「あのさ、女の家なのに可愛げがないとでも思ってるでしょ?」
「……そんな事ないよ」
「ふふっ、顔に書いてあるよ。ふふっ」
◇
「お風呂洗ってくる」
そう相澤に伝え、加藤は浴室に行き、シャワーを出してお湯に変わるのを待っていた時、相澤も浴室に来た事に気づいた。
「俺がやるよ」
「いいよ」
「寒いから奈緒ちゃん向こうに行って温かくしててよ」
「いいって」
「だめだよ」
相澤はスラックスの裾を捲り、靴下を脱いで浴室に入って来た。加藤の肘を掴み、「奈緒ちゃん、向こう」と頬を膨らませて言い、それを見た加藤は口元を緩めて「ありがとう」と言って、浴室を出た。