ファーレンハイト/Fahrenheit

#05 武闘派女と忍耐男(後編)

 俺がキッチンで見つけた物は、その黄色い看板のマッチョしかいないジムのプロテインとブレンダーボトルだった。
 相澤が来た時にそれを話したのか聞くと、マッチョしかいないジムのチラシがリビングテーブルに置いてあり、話をしたと言う。
 俺はもう一度、普通のスポーツクラブではだめなのかと言ったが、優衣香はだめだと言う。

「マシン使ってるとね、男の人が寄ってきて、話しかけて来るから……」

 それは使い方などを教えてあげようとする善意を装った下心のある男の行動だ。スポーツクラブのスタッフもそういった事には対応はしてくれるが、あくまでも店舗内でなら、の話だ。敷地外に出てしまったら、対処は出来ない。

「なら女性専用フィットネスジムは?」
「駅の反対側だから面倒で」

 ――マッチョのジムめ。駅の反対側に出店しろよ。

「マッチョのジムだって、マッチョしかいないよ? 男だよ?」
「マッチョは筋肉の話しかしないよ?」

 ――でしょうね。自分の筋肉と会話してるもんね。

「うーん、でもどうしてダイエットしようとしたの? 何かあったの?」

 優衣香はどうしても原因を言いたくないようだ。それは俺に気を遣っているのが分かる目で、優衣香は俺を見る。

「言わないと、くすぐるよ?」

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