仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
「……生活費は週ごとに。毎週月曜日にお渡しします」

 そういう敦也だが、あまり納得がいっていないようだった。

 多分ではあるが、彼は現金派ではなくキャッシュレス派なのだろう。だからこそ、芽惟の提案が予想外だったのだ。

「あとは、なにかありますか?」

 敦也が芽惟に視線を向けて、そう問いかけてくる。

 その問いかけに、芽惟は少し考えた。

「……今のところは、大丈夫かと。なにか必要があれば、その都度お話しますので」

 夕食がいらないときは連絡をくれる。生活費は週に一度月曜日にもらえる。

 今のところ、それがわかっていれば大丈夫だろう。買い物に行く場所などは、スマホで検索すれば出てくるだろうし。

「そうですか。では、今日の話し合いの場はこれで終わりということで」
「……はい」

 そんな大層なものではないような気もしているが……。

 心の中でそう思いつつも、芽惟は頷く。大層なものではなかろうが、彼にとってはそれほど重要なことだったということだ。

「そういうことで。ごちそうさまでした。まぁ、そこそこ美味しかったです」

 席を立って、彼が芽惟を見てそう告げた。

 その言葉に驚いてぼうっとする芽惟を他所に、敦也は部屋に引っ込んでいく。大方、出勤の準備をするのだろう。

(な、なんていうか、イメージとは違う……気が?)

 冷徹な若社長なんて呼ばれているから、もっと血も涙もないような人かと思っていたのに。
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