仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
(……へたくそな料理)

 メッセージに添付されていたのは、お世辞にも上手とは言えない料理だった。

 父によれば、これは父が作ったものらしい。

 多分芽惟がいなくても大丈夫……と伝えるつもりなのだろうが、これでは逆に心配になってしまう。

(まぁ、私が余計な口出しをするべきじゃないわね)

 心配事を連ねるのもアリだとは思う。だが、どれだけ小言をぶつけても芽惟があの家に戻る可能性は低い。

 だから、それとないアドバイスのメッセージを送った。すぐに返信が来る。

 アドバイスのお礼。それから……芽惟はどうしているかという文章だった。

「こっちのことなんて心配しなくていいのに……」

 愛のない結婚ではあるが、彼が悪い人ではないことは芽惟にもよくわかる。

 でも、やはり娘を心配するのが親心というものだろう。そう思い、芽惟は適当に安心させるような文章を作って、送った。

「さて、買い物の準備準備っと……」

 そう呟いて立ち上がった。

「……今日は一人みたいだし、お昼ご飯も夕ご飯も適当にしようっと」

 敦也は苦労しない分の生活費をくれると言っている。多少は贅沢をすることだって可能なはず。

 が、芽惟はどうしてもそんな気分にはなれなかった。

「贅沢をするのは、彼の役に立っているって実感してから。評価されてからのご褒美!」

 今はまだなんの役にも立っていない。

 それなのに贅沢なんて出来やしない。まさに、働かざるもの食うべからずだ。

 そんなことを考えつつ、芽惟は部屋に鞄を取りに戻るのだった。
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