「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
 アレクサンドラは、与えられたゴージャスな客室のベッドの上で、うとうとと微睡んでいた。
 アレクサンドラにとって、何も身に纏わないままシルクのシーツにくるまっている時が何よりも至福の時。
 でもそれは、決して一人の時ではなく……。

「起きてください、アレクサンドラ様」

 しっかりと鍛えられた筋肉質の体を起こした、肌が浅黒い男もまた、全裸でアレクサンドラの横にいる。

「んんっ……まだここにいて……」

 アレクサンドラは、その男の顔を自らの豊満な胸に埋めようと手を伸ばす。
 男は、アレクサンドラの手を取ると、そのままぐっと自らの胸元に引き寄せる。

「こちらの方が、アレクサンドラ様はお好きなのでは?」
「うん……好き……」

 アレクサンドラは、男の胸筋を肌で感じながら、自らの細長いしなやかな腕を男の背に回す。

「ねえ、キスして」
「もちろんです、私だけの姫君」
「うれしい」

 そうしてアレクサンドラは、朝日を浴びながら本当の想い人に体を貪らせる。
 この快感を覚えてしまって、どうして手放せるというのか。

「んあっ…………そこ…………」

 男は、アレクサンドラの唇に始まり、鎖骨、そして胸のいただきを再び愛し始める。
 昨晩も激しかったが、朝の交わりはより肉食獣のような二人を燃え上がらせる。
 男は、まさにアレクサンドラの理想通りの男。
 昼間は自らに傅き、常に自分のためだけに動いてくれる。
 だが、こうしてベッドにいる時は自分を支配しようとあらゆる手法を使ってくる。
 そんなギャップこそが、アレクサンドラの心を満たしてくれる。
 アレクサンドラにとって男とは、今まさにもう一度自らに入ろうとする、目の前の男ただ一人だけ。
 だから、アレクサンドラはいつもうんざりしていた。
 どうせ勃ったとしてもチンアナゴレベルしか大きくないであろう、エドヴィン王子と勝手にカップリングされることが。
 
(早く、リーゼ様があの小動物のチンアナゴを受け入れてくだされば……)

「アレクサンドラ様……気持ちいいですか……?」
「あっ……そこ……もっとして……」
「お望みのままに……」
「……!!」

 今自分を支配し、快感を与えてくれる男との未来をようやく夢見ることができる。
 アレクサンドラは今日という日に、自分の本当の男との未来を託すことにした。
 ただし、自分をここまで追い詰めたチンアナゴの持ち主には、もう1個嫌がらせをしてからではあるが。
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