「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
 戦場……もとい、ダンスホールの中では、すでに王室専属の楽団による美しいワルツが流れていた。
 通常であれば、一定レベルの社交ダンスのスキルを叩き込まれた令息令嬢による、華麗なダンスシーンが見られるはず。
 ところが……。

「アレクサンドラ様、あの方達はやはり……」
「ええ、我が家の使用人たちよ。最近入ってきた若い子達なの。可愛いでしょう」
「……ああ、なるほど理解しました」

 自分と同じように、明らかにドレスもヒールも慣れていない、さらに言えばそこまで垢抜けてもいない田舎娘っぽい女の子達が、不恰好な踊りを披露しているのだった。
 男性のタキシードはまだ見られるものの、本物の躾や教育をされた者達とは雲泥の差が広がっているのは明白だった。
 一言で言えば、ワルツとはとても呼べるような代物ではない、よくわからない踊りがあちこちで繰り広げられていた。
 中には、出されたシャンパンを飲み続ける者、スイーツを食べ漁るだけの者も、他の舞踏会に比べると圧倒的な割合でいた。

「ここまで仕込むんですね」
「やるなら、徹底的に、ですわ、隊長。それよりターゲットは……」

 アレクサンドラが周囲を見渡すと、すかさず

「アレクサンドラ様、あちらに」

 と、アレクサンドラのセフレ……もとい、ダーリンがすかさずフォローを入れる。

「嬉しい、さすが私のダーリン」

 などと言いながら堂々とさっと唇にキスをするアレクサンドラを見ながら、ニーナは勝手にハラハラし始めた。
 アレクサンドラは、一応、エドヴィン王子のパートナーと言われているし、王子の親……つまり王も王妃もきっとそのつもりだろう。
 そのお膝元のダンスホールで、エドヴィン王子を裏切るような行為をしてもいいのだろうか?とニーナは考えたから。

「あの、ちなみに王様と王妃様は」
「今頃バカンスじゃないかしら、お父様とお母様が連れ出してるから」
「はい!?」
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