アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした
 ダッシュで、ベランダに干してあった洗濯物を寝室へ干し直した。
 ああ、クールで何事にも動じない先輩でいたかったな……。
 寝室から戻ると、何事もなかったように、郡山くんがテキパキと準備をしていた。

「ああ、待って。私もやる!」

 郡山くんは手伝いに来てくれたのに、任せるわけにはいかない。
 植木鉢の底に大きめの砂利、その上に土を入れて肥料を混ぜる。
 そして、例の種だ。
 袋を開けると、どんぐりくらいの大きさの種が一つ、手のひらに転がってきた。
 土に1センチほどの穴を開け、種を入れてそっと土を被せる。
 仕上げに霧吹きで水をあげた。

「どんな花が咲くのかな〜」
「楽しみですね」

 植木鉢のそばに、二人並んでしゃがんで、私は芽が出るのを楽しみにしていた。
 郡山くんは、そんな私を見て嬉しそうにニコニコしている。
 ……種を植えてワクワクするなんて、ちょっと子どもっぽかったかな?

「今日は嬉しかったです。先輩のお手伝いができて。二人で何かを作り上げるって、仕事でしかなかなかできないですからね」

 郡山くんが、少し汚れた指先で頬をかきながら、はにかんで言った。

 そうか、仕事だと思えばいいんだ。種をくれた女性も、モニターのようなものって言っていたし。郡山くんと共同のプロジェクトだと思えば、ガーデニングも難なくできるような気がしてきた!

「そうよね、郡山くんと二人で築き上げるプロジェクトね! 実は、花が咲いて癒されたら感想をちょうだいって、種をくれた人に言われてるの。郡山くんも、何か感想があったら言ってね!」

「う、うん……?」

 私は、郡山くんの複雑な表情にも気づかないでいた。
 先ほどから感じていた自分の心の中に引っかかっていたもの、それが取れてスッキリとした気分だった。
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