アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした
 ええええぇぇ。
 そこまで落ち込んでいるのか?
 僕がミノを預かってしまったせいで?

 仕事が山ほどあるのに、僕はデスクで考え込んでしまっていた。
 確かに、元々は先輩のものなのに、僕が先輩からミノの力を奪ってしまい元気がないのでは本末転倒だ。

「この世の終わり……か」

 僕は、その顔を一度だけ見たことがある。
 十三年前、先輩の旦那さんが事故で亡くなった時だ。
 あの時先輩は、病院から連絡を受けて会社を飛び出すように出て行った。
 先輩は、あの時と同じ気持ちでいるのだろうか?

 僕は……先輩を苦しめているのか?
 思わず、拳に力が入る。

 僕にとってミノはもう恋敵だ。
 しかし、ここ数日一緒に暮らしてみて、ミノはいいやつだと理解した。
 先輩のことを一番に考えている。
 ここで問題なのは、もしかしたら先輩が、ミノの癒しの力に取り憑かれていないだろうかと言うことだ。そうなると、先輩の元へ簡単に返すわけにはいかない。
 もう少し様子をみようと、ミノを預かったままさらに数日が過ぎた。



「失礼しますっ!」

 販売促進部に、楠木先輩が意を決したような顔で入ってきた。

「郡山課長! 例のもの、返してくださいっ!」

 周りの目も気にせず、先輩は僕のデスクを叩いてそう言った。
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