アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした

「ん、何が?」
「郡山課長ですよ。だって、チーフのこと好きなの、バレバレじゃないですか?」
「ングっ!? えっ、そうなの!?」

 思わず、咳き込みそうになった。

「そうなのって、気づいてなかったんですか?」
「いや〜、そういうわけじゃないんだけど、やっぱり私の方が8歳も年上だし、ありえないかなと」

 お互いもう40代でいい歳だし、歳の差なんて気にすることはないのかもしれないけど。
 それでもやっぱり、8歳差は心のどこかで引っ掛かる。

「そ、そういう三島さんはどうなの? 三島さん的には郡山課長は──」
「あ、私、オジサンはパスなんです」

 はっきりきっぱりと言われた……。
 そうか、20代の三島さんから見たら、40代はオジサンか……。
 そりゃそうだよ、三島さん、私の娘と年齢変わらないんだから……。
 ちょっと、惨めになって泣きそうになった。

「あ、あー! チーフのことはオバサンなんて思ってないですからね!?」
「いいよいいよ、ありがとう……。そんなフォローしなくても大丈夫よ……」

 口にされた方が余計に惨めになりそう。
 その時、娘からの電話が鳴った。

「ごめん、ちょっと電話」

 ひと気のないお手洗いの前の廊下で、娘の(より)と、いつもの会話を交わす。

「うん、今みんなと打ち上げしてるところ。わかってるわよ、はい、飲み過ぎません。じゃあね、おやすみ……」

 一言二言交わして通話を切ったところで、郡山くんがお手洗いから出てきた。

「あっ、楠木先輩、お疲れ様です」

 今や彼の方が上司なのに、今でも“先輩”と言って慕ってくれるのは、素直に嬉しい。

「娘さんからですか?」
「そうなの。もう、毎日しつこいくらいかかってきて」
「そう言うわりには、嬉しそうですね」
「自慢の娘ですから」

 本当に、いい()に育ってくれたわよ。
 娘も自慢だけれど、それを育て上げた私自身も自慢したいくらい。

「先輩。この後、二人で飲み直しませんか?」
「えっ?」
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