アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした

 あー、そう来ましたか。
 確かに、昨日は『案件を終わらせたい』って断ったからなぁ……。
 数年前までは娘を理由にして断れていたけど、今はその手が使えず、どう断ろうかと困っていると……。

「えっ? 飲み会のお誘いですか?」

 明るいトーンの声で間に入ってくれたのは、郡山くんだった。

「え、あ、いや……」

 突然会話に入ってこられて、部長は動揺している。
 それでも郡山くんは、遠慮なくずけずけと言い放った。

「いやー、奇遇ですね。僕も今日飲みたいと思っていたんですよ」
「いや、そういうわけじゃなくてだね……」
「えっ、部長がご馳走してくれるんですか!?」
「はっ? いや、違……」
「みんなー! 今日は打ち上げに部長がご馳走してくれるそうです!」

 それを聞いて、他の社員はわっとこちらに集まってきた。
 郡山くんが大声で宣言しちゃったものだから、部長も仕方なく、

「ええーい、わかった! 今日は俺の奢りだ!!」

 他の社員に囲まれながら、ヤケになって叫んでいた。
 部長の頭より少し背の高い郡山くんが、こっそりと私に向かってウインクした。
 ……もしかして、助けてくれた?

 就業後、社内のロビーでみんな集まると、どうやら郡山くんはお店の予約もしておいてくれたらしい。
 と言っても、いつもの行きつけの飲み屋なんだけれども。
 でも、何も言わなくても予約までしておいてくれるなんて、スマートというか、やはり仕事のできる人だなぁって、感心してしまう。

「チーフ、郡山課長、絶対わかってて間に入ってくれましたよね」
「……あ、気づいてた?」

 飲み屋へ入り予約した座敷に座ると、三島さんが耳打ちしてきた。
 目ざといなぁ……。三島さんには隠し事ができない。
 そういえば、あれだけしつこかった部長が絡んでこない……と思ったら、社員のみんなに囲まれてる。
 えっ、もしかして、みんなでバリケード張ってくれてるの!?
 嬉しいやら、恥ずかしいやら……。

 注文したビールを一口。確かに案件がひとつ終わってホッとしているけれど、今日は周りが賑やかすぎて、気分良く酔えそうにない。

「チーフ的には、どうなんですか?」

 三島さんが、可愛く首を傾げてこちらを覗き込んでくる。
< 6 / 54 >

この作品をシェア

pagetop