泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ジオはうんざりして叫び、うるさい連中を置き去りにステラの背中をポンポンと何度も軽く押して移動を促した。
「またな、子兎嫁ちゃん」
ステラは生温かい瞳で手を振る二人にぺこりと会釈しつつジオに背中をせっつかれた。
「子兎ステラいいね!」
ジオが花嫁ちゃんと去って行くのを見て、レオナルドはパチンと指を鳴らして笑った。
「常に潤んだ青い瞳に庇護欲そそる大人しさ。ジオ好みの守ってあげたい感じ!」
ご機嫌に騎士団の寄宿舎へと歩き始めたレオナルドの隣で、ルキナも何度も頷いた。ルキナはジオから受け取った荷物を抱え直す。
「マリを攫うなんて極悪非道なキドナ国だから、どんなトンデモ花嫁が来るかと思ってましたけど」