"愛してる"は蝶よりも花よりもずっと脆い。

ピンチも突然に

馨 side

あのバカ女、どこに行きやがった。

秘書と話し込んでた俺も悪いけど、ちょっと目を離した隙に逃亡とかいい度胸してんじゃねぇか。

沢山の人で溢れかえっているパーティ会場で、すぐにあいつのことを見つけるのは難しい。

俺の予想だと、あいつはこの大広間にはもういない。

きっと、探検しようかなとかって軽い気持ちでどこかをほっつき歩いている気がする。

とりあえず大広間を出ようとするが、取引先の社長やら女やらに捕まってなかなか進まない。

どうしようかと考えを巡らせていたその時だ。

「如月社長の女どこにもいなくね?」

「あぁ、このタイミング逃すなよ。社長のスピーチが始まる前に捕まえろ」

「分かってる」

俺の後ろを通った男2人が、そんな話をしているのが耳に入った。

「おい、お前今なんて言った?」

「如月社長、お疲れさまです。何も言ってませんよ?」

「お前、何か企んでるだろ。あいつはどこだ?」

「すみません、何の話をしてるのかさっぱり分かりません。あいつというのは、社長のお連れ様のことですか?」

「そうだ。お前ら、あいつを捕まえてどうする気だ?」

「捕まえるなんてそんなことしませんよ! 僕は今日、自分の恋人と来ているんです。社長のお連れ様に手を出すなんてしませんよ!」

「すまない、人違いだ」

俺のすぐ真後ろから聞こえたから、確信を持って声を掛けたんだけど違ったか。

俺がその話を聞いて振り向くまでそんなに時間はかかってないし、絶対まだ近くにいるはずだ。

「社長、キョロキョロしてどうなさいました?」

「お前、このあと予定あるか?」

「あとは会社に戻って、残りの業務をするだけですが…」

「その業務は急がないよな?」

「えぇ、ちょっとした雑務を片付けようと思っていただけですから」

「それなら、お前に頼みたいことがある。早急に対応して欲しいことが1つ、お前にしか頼めない。実は─────」

俺は自分の秘書である山田に、さっきのことを手短に説明した。

山田には、俺が社長の座に就くよりずっと前から色々助けられていた。

頼りになって、助けてくれて、山田なしではうちの会社は成り立っていないだろう。

「では、(ちか)様を発見次第、社長にご連絡いたします。スピーチまで、何とか繋いでてくださいね」

「あぁ、頼んだぞ」

くそっ、完全に(ちか)から目を逸らした俺の責任だ。

どうか、無事でいてくれ。
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