喫茶店の悪魔

抹茶とチョコクロワッサン



「―ね。よし、わかったかな?レジ係や接客業はお客様第一が命なんだ。お客様を笑顔にね。お客様はほんとに大切にするんだよ。」

「はい、わかりました。」

「お客様がもし困ってる表情なんかしたらすぐに−」


私のこの返答が、間違っているのだろうか?


思わず、私の返答が間違っているのかと誤解してしまいそうになる。

お客様お客様って何回言うんだろう。認知症かと疑いたくなるくらいに、同じこと言っているし。

話がやっとのこと終わったかと思って「わかりました」と頷いて言ってしまった。


このチェーン店の男性店長は、少しだけ掠れたような声が特徴的だ。

「年齢は30なんで」とか真顔で言ってたけど、本当かはわからない。失礼だけど。



私は、お客様が命と言えるほど第一なんて思わない。

確かに、店員側からすればお客様を大切にしなければならないのはある。でも、ここはお茶したりランチを食べるための喫茶店だ。

お客様第一?店員が届けさえすれば、何でもいいのではないか。そんなことを思う。


アルバイトスタート2日目の夕方4時。


こんなんでやっていけるのかと、不安な気持ちに襲われる。

昨日は接客を教えてもらったりしていて、中々レジに立たしてもらえることがなかった。少しだけ背中に緊張が走る。

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