喫茶店の悪魔


あーなに緊張してんだ私。

ほら、作り笑いの笑顔笑顔。

まあ笑うなんてしないけど。


「君が、東條さん?」


その爽やかなイケメンボイスの声に顔を向けると、私と同じくエプロンに身を包んだ、若い男性。茶色くまん丸い目をしている。


「はい」

「何歳だっけ」

「……17です」

「えっまじで?俺と同い年くらいかと思ったくらい。大人っぽいなぁ」

「どうも」


じろじろと顔を見られる。本当に嫌だ。

大人っぽいとはよく言われること。

ほんと、意味わかんない。


「緊張するよね。あ俺は白浜って名前。東條さんと同じ仕事だし一緒に頑張ろう。」

「はい」


この喫茶店は、最初にメニューを選択し会計をする。それから店員が出来立てを席へと持っていくのだ。

私の担当は、注文を聞き取りレジ打ちをし会計をしたり、珈琲やクロワッサンをお客様の席へと運ぶ、言うなら接客だ。

熱い珈琲をコップに入れたり、パンを焼いたりする作業は失敗でもしたらという恐怖やら不器用だしやらがあるので、なんとなくこちら側にしておいた。


―チリリリンッ


喫茶店の扉の鐘が鳴る。


「いらっしゃいませ。」


爽やかな声でお客様は迎えられる。

ネクタイをきちんとしめたスーツを着た細長い男性。サラリーマンの休憩がてらだろうか。それとも?色々な説が立てられる。

男性は入口近くに位置している白浜さんを目に通し、白浜さんのレジへ行く。


「チョコクロワッサンと珈琲で」

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