喫茶店の悪魔


「あのさー澪」

「はい」


天さんはそれから、恥ずかしそうにくしゃっと笑う。


「また次来た時も、その次の年も……、一緒に、この日の出、見てくれる……?」


隣を見てみると、その瞬間、年すらも違うのに私よりもずっとずっと、小さな小さな子供に見えた。無邪気だけどどこか泣いている子供みたい。

触れてしまえばすぐに壊れてしまいそう。


「天さん…?」

「あ、はは。ごめんごめん。さ帰ろう。今って何時かなー時間結構経ったし」


そう言って、青い空の方に天さんは立ち上がる。

あんな顔されたら、黙っている訳にはいかない。

消えてしまいそうなその手を、両手で思い切り掴んで自分のお尻を上げて立つ。


「っ、澪?」

「日の出、一緒に見ましょう。」


太陽は上り、日の出ではなくいつも見ているあの晴れた青い空となっていた。

広がる空を見上げる。

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