喫茶店の悪魔


「嫌でも私が日の出を見させます。どんなに辛くて悲しくても、どんなに雨が雷が降ってても、一緒に日の出を、見たいです。」

「…うん」

「毎日嫌でも日は上るんですから。一緒に見ましょう。……だから、いなくなるみたいなのやめて下さい。」

「あ、あーそんな口調になってた、かな。」


「ごめん」と少し笑って、今度はどこかいたずらっぽくえくぼをつけ笑う。


「ってか俺と日の出見たいってゆーのは」

「別に変な意味ないので。他に見る人がいないというだけです。」

「ふーん、ぼっち?」

「……最低ですね。」


そう無表情で言うと天さんは「ごめんごめん冗談」と謝る気ゼロで笑う。本当に最低だ。

何で私、こんなやつと一緒に日の出を見たいとか言っちゃったんだろうな。バカらしい最悪。


「さっ、帰ろ。」

「はい」


日の出なんか、誰かと一緒に見たのは初めてだった。

日が沈むのはよく見るのに、日が上ることはあんまり見ないものなんだな。

前、日の出を見た時は1人だったと思い出す。お父さんが死んじゃった時だ。辛くて苦しくて、夜明けまで部屋で泣いていた。

ふと窓を見ると日の出だったんだ。

なんだかあの日の出が懐かしい。お父さんが死んでしまって、沢山時が経ったんだな。

会いたいな…お父さん。

家出をした今も別にぼっちで孤独なのは変わってないけど……


「はぁ〜」


小さくあくびをするその横顔を見る。

…でも、今は1人じゃないのかもしれない。

少しだけ、そう思えることが嬉しかった。





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