喫茶店の悪魔

晴れ男と雨女?


喫茶店に行けば、いつもの光景が広がっていた。

お茶を飲みながら笑い合う年配の女性たち、少しイカつめな服を着た男性、制服姿の中高校生たち、カップルや家族。


あー、やっぱ、なんか好きだな。


この雰囲気も、この喫茶店の仕事も。

この喫茶店に来たときだけ、辛いことや悲しいことを忘れられたらいいな。と、バカらしいが、アルバイトながらに思う。


ふとまた、あの美しい太陽の日の出が頭に浮かぶ。


今日の始まりをこの目で見ることができるって、なんだかすっきりする。今日をちゃんと胸を張って生きようと思える。


―チリリリンッ…



「チョコクロワッサンと抹茶です。」


いつものメニューを、手慣れた手付きでテーブルに置き、そそくさと立ち去る。


「店員さん」


後ろからどこか悪魔のような囁きが聞こえた。

一瞬、無視をしようか、聞こえなかったようにしようかと迷ったが、一応お客様だ。

しっかり対応しなければ。


「はい、どうしましたか。」


その時、私の顔に指が近づけられる。
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