喫茶店の悪魔

死んだと思いました。




モヤモヤとしながら黒い上着を購入した。

そんなに高いものは買えないし、売り残りセールになっていた服を選んだ。

裏起毛で温かいけど、その生地がボワボワしててちょっと使いずらいな。そこが売れ残りの原因になってしまったかと思う。


まあ、SDGsに貢献できたと思えばいいか。


結局、2人は道を曲がって行ってしまい、あの人が天さんだったのかわからなかった。そんなまま、マンションに着く。


もし、あれが天さんなら。


嘘をついていたのかもしれない。


もしかしたら、ほんとは恋人がいて。

それであの愛しいような目も彼女さんに向けられていて。

でも、そうだ。そんなの居候かつ手伝い人間の私には関係ないじゃん。


それにまあ、声が似てたってだけだからわからない。


自分で納得したところで、部屋番号を確認しゆっくりと扉を開く。


いつもは「おかえりー」と言ってくれるのに、なにもない。

どうしたんだろう。

迎えてくれないし、気づかれないのは、家族での毎日の出来事を思い出した。

リビングに顔を出すと、天さんがあっ、と口を開けてこちらを見た。

干し終わったベッドを敷いて、その上に座っている。
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