喫茶店の悪魔

「やっぱあの人とは……恋人関係とか?」

「違います。」

「えーそなの?」


断じて首を縦に頷いたりしない。

私と天さんの関係はよくわからない。だからそこ話すのは本当に面倒くさい。

ここでは嘘をつくしかないのだ。

嘘だけは上手な私は、何の違和感もなく言葉を作り言い放った。


「私とあの人は、いとこなんです。」

「え、いとこ?」

「はい。色々と事情がありまして。同居してるんです。」

「えー大変だね。それならバイトんとき言ってくれればよかったのに」


やっぱり思った通り、深くは聞いてこない。

いとこ同士の関係と言ってしまったこと、天さんに言わなきゃな。


「全然会いませんでしたから、わかりませんでした。」

「うん、だよねー。まあよろしく。今日はちょっと病院の検査みたいなの行かなきゃでどうしてもバイト出れなくてさ。東條さんも他の人に変わってもらったんよね?」

「はい。白浜さんもそうだったんですね。」

「んじゃー行くね。ばいばい」

「はい、また」


小さく頭を下げて、静かにドアを閉めた。


家にいた時は、お隣さんとか近所の人とかと話してなかったし、気にしてなかったな。

こういう気遣いもどこか必要なのだと知った。





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