喫茶店の悪魔
―チリリリンッ
扉の鐘が鳴った。
私の方に来るであろうお客様だ。
前髪はボサボサだろうが知らないが、服や身だしなみは整えないと。
背筋を伸ばし、出来るだけ睨み付けることのないような目付きでそのドアの方を向く。
扉が低いのかお客さんが高いのか、入る扉に体を少しかがめている。
真っ白な肌。ふさっとしたハイトーンカラーの金髪。真っ黒な目。鼻筋の通った鼻。
年齢は20代くらいだろうか。
綺麗な顔の人、だな。
金髪に染めたんだろうな。色白で綺麗な顔のパーツだし、ハイトーンなカラーがよく似合っている。センター分けぎみだけど前髪は存在している。
んー、ただの偏見かもしれないけど、なんか人生楽しんでまーすみたいな見た目。チャラそうだし、近寄り難い雰囲気を放っている。
うわー、初めてのお客様か。ちょっと最悪。
「…いらっしゃいませ。」
笑顔で元気よく言うんだよ?と言う店長が頭によぎるが、そんな店長を無視して、無表情で小さくぼそっとその人に言った。
ペコリともせずに無視されこちらに向かってくる。
それは普通なのだろうが、私の怒りが少しずつ溜まってく気がした。
初めてのお客様がこの人か……
「…何にいたしますか。」
「抹茶とチョコクロワッサン」
意外に綺麗な男性の声をしている。