喫茶店の悪魔


壁には蒼と蓮が書いたクレヨンで書いた似顔絵。セロハンテープで無理矢理白い壁が見えないほどに埋め尽くされている。

私がいない間に増えてる気がする。


リビングの扉を開ける。


「あ、澪ちゃんだー!!おかえり!」


蒼と蓮がわーっと私の方に駆け寄ってくる。


「あら!澪じゃないおかえり!!ほんと無事でよかった~」

「澪ちゃん、おかえり」


お母さんはニコっと笑う。お父さんもニコっと笑う。弟たちも、笑う。


全部全部、偽物に見えてきてしまった。仮面を被ったように見える。


ほんとは、家族4人で幸せに暮らしたいから出ていってほしい。そう思ってるんでしょ?


「もう寝ときなさいね。顔色悪いわ」

「は、うん。」


金髪さんといたときのようにはい、と言ってしまいそうになった。
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