喫茶店の悪魔

最初、30歳とか年齢は嘘ついてるでしょ、とか失礼なことを思っていた自分に殴りかかりたい。こんなにもいい店長なのに、最低だ。全然イケメンさんだし。


「今日は土曜だからちょっと混むかも。病み上がりで申し訳ないけどレジ担、いける?」

「はい、わかりました。」


エプロンをつけて、午前の人と交代しレジに立つ。見渡せているようでどこか落ち着く。

おしゃれにここでお昼を食べる人、お茶会の叔母さんたち、ぽっちゃりさん同士の仲の良さそうな可愛らしいカップル。


―チリリリンッ


「いらっしゃいませ。何にいたしますか」


慣れた手付きでスラリと言う。年齢は30代くらいの男の人だ。かけているメガネをクイッと戻す。


「んーお姉さん、何が良いと思う?決められなくて」


振られるとは。それでも私は負けない。


「はは、困ってるね」

「いえ、チョコクロワッサンがおすすめです。この喫茶店では人気です。」


金髪さんの言っていた通り、無表情でも困っているという私の心は読まれてるんだな。あの人が言っていたことは間違いではなかったようだ。

どうしてこんな当たり前のことが気づかなかったのかな。読まれるのが怖かったのかな。


「じゃあそれと抹茶で」

「…抹茶。」

「ん?」

「、すみません、わかりました。お会計は」


お会計などを済まし、男の人はカウンター席に座る。
< 62 / 204 >

この作品をシェア

pagetop