喫茶店の悪魔

泣いていいよ。



1日中、部屋のベッドに横になっていた。そんな何もしないで横になっておくだけの1日は、以外にも楽で1日の虚しさがあるだけだ。


―次の日の朝が来る。


体温は平熱の36度まで下がっていた。

いつも通りの日常。

お父さんは会社に行き、弟たちは小学校へ行き、お母さんは午後から仕事へ。


家には誰もいなくなる。この時間が1番私には心地がよかった。


熱が下がったので、しっかりマスクを着用して外へ出た。午後、喫茶店へ向かう。


駅まで歩いて電車に乗り継ぎ、倒れてしまったその場を、もう何10年も前かのように懐かしんで通り過ぎる。

久しぶりに見上げたレトロな雰囲気を放つ喫茶店。手軽な価格で飲んだり食べたりできるこの喫茶店がやっぱり好きだと思う。


思い切って扉を開ける。


「おお東條さん!!元気になったんだね。マスクなんかしてー治ったのかい?」

「はい、治りました。急に休みとか取ったりして、すみませんでした。」

「いいよそんなの大丈夫よー」


ただのバイト店員なんかの私に、店長はまるで孫を喜んで迎えるような顔で言ってくれた。
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