Fortunate Link―ツキの守り手―


**


(――シュンと、あいつがイベント会場から消えた…)

白石星羅は会場の控室から飛び出して、駅前の通りに居た。

辺りをきょろきょろ見回す。

「…どこに行っちゃったんだろう」

なぜだか嫌な予感がしていた。

(――あいつは異常にシュンのことに興味持ってるみたいだったし…)

胸を押さえ、あのオレンジ髪の男のことを思い出していた。

ともかく、彼女にとってシュンのことが心配だった。

必死にその姿を求めて、走り廻る。


「――星羅(セイラ)」


その時、突然、自分の名を呼ぶ声が響いた気がした。

はっと、足を止め、彼女は周囲を見回す。

けれど辺りにはにこちらを向く人の姿も無く、縦横無尽に行き交う雑踏があるのみだった。


(……気のせい…?)


そう思いかけたその時、


「星羅(セイラ)」


もう一度、はっきりとその声が聞こえた。


「……えっ」


星羅はある一点を見て、立ち止まった。

彼女の知る人物が通りの角を曲がったように見えたからだった。


(……嘘…)


疑いながらも、彼女の足は自然とその姿を追っていた。

角を折れ、狭い道を走る。

しばらく行くと、そこにぽっかり空いた空き地があった。

そしてそこに長い黒髪の少女の後ろ姿があった。

星羅がその背に近づこうとすると、彼女は振り返った。


「……あ…」


星羅は立ち竦んだ。

相手の顔を見つめ、信じられないようにまじまじと見つめた。


「……お姉ちゃん…?」


そう呟くと、長い髪の少女は微笑んだ。

その顔立ちはまるで星羅と瓜二つで、まるで鏡越しに相対しているように錯覚しそうなぐらいだった。


「……な…んで……?」


星羅は震えを抑えながら、呟いた。

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