Fortunate Link―ツキの守り手―



光が止み、周りに景色が戻る。

そこは雑草が鬱蒼とするほど伸び放題の、武道館の裏手だった。

どういうわけか、俺達は一瞬で場所を移動していた。

前方には銀髪の夕月さんがいて、早速立ち去ろうとしていた。

「あ、ちょっと」

思わず呼び止める。

夕月さんは足を止めた。

「あんまり瀬川蓮には近づかない方がいいですよ。
お気付きかもしれませんが、彼は今まで何度か人を殺めてます。
何をしでかすか分からない、危険な類いの人間です」

それだけ言って、また立ち去ろうとする。

「あ、あの。
あなたは何者なんですか?」

「前にも言ったでしょう。
あなたは私を知っているはずだ――って」

少しだけこちらを見た金色の瞳が、悲しげに揺らいだ気がした。

その瞬間、胸が一際高鳴った気がした。
彼女の眼差しが、俺の中で、知っている人のものと重なった。

しかし、声をかける間もなく彼女は立ち去っていく。

「シュン。
後を追わなくていいのかよ?」

「ああ」

俺は頷き、去っていく彼女の後ろ姿を見た。

「いいんだ」

分かってしまった気がした。

彼女の正体を…。
彼女が自らその正体を名乗らないわけも…。

(俺が気付くまで、待っているのか…)

彼女の目の金色は、まるで夕空に浮かぶ月のように優しく切なく柔らかく…。
真綿のように俺の胸をしめつけた。





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