水の国の王子様は従者を溺愛中!
かつての親友


~カイルside~


こんな暖の取れない中で寝るのはかなり危険だ。

リディアを寝かさない様に起こすけど、リディアは眠気に抗えないようですぐに瞼が閉じてしまう。

何とかリディアを冷やさないようにブランケットの下でリディアを抱き寄せて自分の上着もリディアに被せるけど、俺の体温も低いしこの程度で暖められるのか…


その時だった。


「……ぃ」


外から微かに声が聞こえてすぐに顔を上げた。


すると、道の向こうから松明?のような光が見える。


もしかしたら宿屋のご主人が俺達が向かった事知ってるから助けに来てくれた…?

しかし、あとから考えればこんな吹雪の中普通の火が点くわけがないのは分かる事だけれどこの時はリディアを守りたいという焦りから思考が働かなかった。

「オーイ!ここだ!」

俺は急いで光の見える方に助けを求めた。
光が近付いて来る。

どうやら馬で来ているようで、近くに来ると乗っていた人は手の平に火の球を出したまま馬を降りてこっちにやってきた。

まずい…アヴァンカルドの王族だ。

俺は急いでくるまっていたブランケットで顔を隠す。

「カイッ!カイなんだろ!?」

その声に俺は俯いた。
顔を見なくてもわかる。

この声は現アヴァンカルド王国国王。
ダニエルの声だ。

「俺だよ!ダニエルだ!すぐ近くに今は使われていない厩舎があるんだ、そこで天候が回復を待とう!馬車は用意出来なかったが荷台はあるから彼女と乗ってくれ」

「いや…それは…」

「ほら、早く!彼女の顔色が良くない」

リディアを見ると唇の色が先程よりも青くなっている。

ダニエルは穴の中に降りてくると、眠ってしまっているリディアを逞しい腕で抱擁する。

「ダニエルッ」

「大丈夫だ、カイの彼女を取って食おうとしてるわけじゃない。一度暖めるだけだ、心配なら手を握ってろよ」

リディアの手を握っていると、冷たかった手は一気に暖かくなってホッとする。

「カイは寒さも多少耐性あるから大丈夫だよな、彼女まだ目を覚まさないし早いところ向こうで暖を取ろう」

ダニエルはリディアをサッと俺に預けて穴から出ると、馬を出す準備を始めた。

リディアをブランケットで包んで抱き上げて、馬に繋がれている荷台に自分達の荷物と一緒に乗り込んだ。

……ダニエルは誰も連れていない、自分の身分分かっているのだろうか。

確かに火の力なら自分の身は自分で守れるか…


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