水の国の王子様は従者を溺愛中!


ダニエルが馬を走らせてからすぐに目的地に辿り着いた。

もうボロボロの厩舎だが、即席の風避けよりは全然良い。
ダニエルが乗ってきた馬も休ませる事も出来る。

厩舎中にある管理室には古い暖炉があり、ダニエルは火の力ですぐに火をつけた。

抱き上げて連れてきたリディアを暖炉の前で横に寝かせる。

「濡れた服は乾かした方がいいな」

ダニエルはそう言うと躊躇なく服を脱ぎ出した。

「どうした?カイも早く脱いで乾かした方がいい、彼女も」

「…彼女の服脱がすからダニエルは反対向いてて貰っていい?」

「おっと、それは失礼」

ダニエルはそう言うと扉の方を向いて脱いだ服を椅子にかけて乾かす。

いくら俺でもリディアの服を勝手に脱がすなんてしていいものなのか…いや、緊急事態だし…それに昨日だってあんな事したし…

心の中で言い訳をしながら眠っているリディアの服を脱がしていく。

「…彼女の服脱がしても良い仲なんだな?」

「……恋人なんだ……結婚も約束してる」

「そうなのか!めでたい事じゃないか!カイに恋人が出来たなんて初めて聞いたぞ!あの襲撃から二人で生き延びたんだな?ん…?しかし、彼女は町の民家でご両親を亡くされたと…」

「彼女は貴族とかではないよ、城で働いていてたまたま俺達だけが生き延びたんだ。一緒に逃げて支え合ってるうちに惹かれあって…恋人になったのも昨日だけど」

リディアの服を脱がすと俺も自分の服を脱いだ。

「そうか、それならそうとアクアヴェールの町で会った時に言ってくれたらすぐに二人とも王都に、いや。ライマーレの襲撃の件もあるから城内になるか?とにかく新居の手配は俺が…」

「いや…ダニエルの厚意はすごく嬉しいけど、俺はもう王族は捨てた。もう水の力は滅亡したんだ…」

「そんな事しなくても俺達が最後の水のフォースは必ず守る!ライマーレと戦争になろうとも…ライマーレは今深刻な水不足だろ?俺は…アクアヴェールにあんな襲撃を仕掛けたライマーレを許さない」

ダニエルはそう言うと拳を壁に打ち付ける。

「ダニエル!君らしくないよ!そんな事言わないで欲しい…」

「カイは家族を…国を…罪のない人達をあんな冷酷に殺したライマーレが憎くないのか!?」

「憎いよ!憎いけど……戦争をすればこの憎しみは必ず連鎖する…現に最後に放った呪いのせいで憎まれ水のフォースを持った国外にいる王族も全て殺さただろ…戦争したって何の意味もない。ただ国民を苦しめるだけだ」

「…じゃあ、どうすればいいんだよ!?このままだとライマーレから水を求めて攻撃を仕掛けられるかもしれない…その前に何とかしないと…」

いつも自信に満ち溢れているダニエルだが、自分の代になって親も経験した事の無い未曾有の問題に頭を抱えているのがすぐに分かった。

ダニエルが抱えている物は若い王には大き過ぎる問題だ。
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