18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

「くそ……不意打ちとか卑怯だろ」

 伊吹くんの言葉に、彼には何かサッカー部を辞めた理由があるのだろうと悟った。


「あの、伊吹くん。あの人たち、わざとなの?」

「俺のことが気に入らないんだよ」

「だからって、こんなことするなんて……」

「くっだらねぇ」

 伊吹くんは吐き捨てるようにそう言って、額の傷を押さえた。その手に血が付着する。


「大変、手当てしなきゃ!」

「平気。これくらい放っておけば治る」

「細菌が入ったら大変だよ。ちゃんと消毒しないと!」

「平気だって」

「伊吹くん、保健室に行こう」

「え?」


 目の前の人が顔面から出血しているという現実で、私の彼に対する苦手意識は吹っ飛んでしまっていた。

 私は彼の手を握って、そのまま保健室へ向かった。

 だけど、途中でふと気づいた。


「あっ、ごめんなさい!」

 慌てて手を離したら、彼は驚いた顔で私を見て、それから思いっきり顔を背けた。


 うわあっ……やってしまった。

 これ、完全に嫌がられてるよ。


「ごめんね。えっと、傷は痛くない?」

 遠慮がちに訊ねると彼は無言でただ頷いた。


 ああ、私は何をやっているんだろう。

 伊吹くんからすれば迷惑かもしれないのに。


 それから私たちは何も話すことなく、気まずい空気のまま保健室へと向かった。



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