18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
数学の補講は相変わらず、内容を理解しているのは半分くらいで、日々これでいいのか悩んでいた。
それでも進学するって自分で決めたことだから、自分で何とかしなきゃいけない。
ため息をつきながらの下校。
校舎を出てからグラウンド沿いの道を歩いていたら、前方に伊吹くんを見つけた。途端に足が遅くなる。
気づかれないように、そっと距離を置いて歩こうと思った。
そのとき、伊吹くんに向かってボールが飛んできた。
危ない! と思ったらもう遅くて、ボールは彼の頭に直撃した。
「伊吹くん!」
派手に地面に転んだ彼のところへ慌てて駆け寄ると、グラウンドのほうから声が聞こえてきた。
「ああー、すいませーん。先輩!」
声のしたほうを見ると数人の男子が笑いながらこちらを見ていた。
これ、絶対わざとだ。
「伊吹くん、血が……」
額に傷がつき、血が滲んでいる。
「あいつら、思いっきりやりやがった」
「えっ?」
伊吹くんはおもむろに立ち上がり、そばに転がるボールを拾って、勢いよく蹴り飛ばした。
ボールは大きく弧を描いてぶつけた男子たちよりも遥かに遠くへ飛んでいき、彼らは慌てて追いかけていた。
「す、すごい……」
伊吹くんの蹴りがあまりにもすごすぎて呆気にとられてしまった。
「バカにしやがって」
伊吹くんはグラウンドを睨みつけながらぼそりと言った。
驚いた。
伊吹くんは前にサッカー部にいたとは聞いていたけど、こんなにすごいのにどうして辞めちゃったんだろう。