18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 幼い頃なんて、母にいろんな人のところへ連れて行ってもらったから、誰に何を話したかなんて覚えていない。

 シンデレラのこともガラスの靴を履きたいことも、会う人みんなに話した。


 結婚すると言った相手のことは覚えていないし、顔の部分もぼんやりしていてまったく見えない。

 確かに、いつか誰かに言ったはずなんだけど、誰に言ったかだけはわからないのだ。


 だけど、そんなものだろうなあと思う。

 幼い頃のことなんて、断片的にしか覚えていないもの。


 それでも、思い出そうとするととても幸せな気持ちになるから、きっと当時の私は嬉しかったのだろうと思う。

 どうしても思い出したくて、母に訊いたこともある。


「わたし、誰かにプロポーズしたの」

 そうしたら、母は笑ってこう言うのだ。


「いろはは誰にでも将来はお嫁さんになりたいと言っていたわよ」


 ああ、きっと結婚のことなんてよく知らずに言っていたのね。

 でもやっぱり思い出すたびに気になってしまう。


 そのことは誰も知らなくて、相手もわからないから、どうしようもないことだし、もう結婚しているのだから気にしても仕方がない。


 でも、夢にまで見るなんて、どうかしている。


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