18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

20、遥の耐えた夜


「やっぱり、こうなるよな」

 遥は横向きのまま頬杖をついて、となりでぐっすりと眠る彼女を見つめた。

 肩まではだけたワンピースは胸もとをギリギリ隠した状態で、本人は幸せそうに寝息を立てている。


 遥はため息をついた。

 寝室に入る前、いろはの「こわいぃ」という声を聞いてから、なるべくそういう空気にしないように、完全に安心させる作戦が失敗に終わったのだった。


 いや、正確には成功だった。

 彼女はすっかり安心しきっていた。

 だからこそ、今こうしてぐっすり眠っているのだ。


「違うんだよな。そうじゃないんだよ、いろは」

 ぼそりと呟く彼の言葉は、誰の耳にも届かない。


 仕方ない、と彼は胸中でぼそりと言って、自身も寝ることにした。

 眠れるとは到底思えないが、目を閉じていればいずれ眠気も来るだろう。


 しかし、30分、1時間と経っても寝入ることができなかった。

 それどころか、恐ろしい誘惑が待っていたのである。


「……うー、ん」

 いろはが突然、ごろんと寝返りを打ち、遥にくっついてきた。

 遥は目を開け、半眼でとなりを見据えた。


「いろは」

 ぼそりと呟いたその名前は、静けさに軽く響いて、虚しく消えた。

 先ほどまでお互いにキスをしたり触れ合ったりと、このままいけばうまくいくはずだったのに、彼女は途中で眠りに落ちた。


 さぞや気持ちよく眠っていることだろう。


(襲っちゃおうかな……)


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