18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「え……秋月?」
伊吹はどくどくとうるさく鳴る鼓動に耳がおかしくなりそうだった。
「伊吹くん、偶然だね。えっと、妹さん?」
今日もめちゃくちゃ可愛い、と伊吹は心の中で呟きながら、訊かれたことに慌てて答えた。
「いや、違う。親戚の子……今日は、付き添い」
「そうなんだ」
伊吹は完全に動揺している。
まさか、こんなところで彼女に会えるとは思わなかったので、心の準備ができていない。
奪っちゃえよ、という長門の声が一瞬降りてきて、慌てて振り切った。
ドキドキしながら何を話そうかと考えているときに、どきりとすることが起こった。
「いろはの知り合い?」
伊吹はその男を見た。
背の高い大人の男だ。
呼び捨て。
それだけで、伊吹は彼に嫌悪感を抱いた。
「うん。学校の、同じ学年の子なの」
その男に説明をする彼女を見て、伊吹はモヤモヤした。
しかし、その男はもっとすごいことを言い放った。
「どうも。うちのいろはがお世話になっているようだね」
うちのいろは。
その言葉で伊吹は衝撃を受けた。
「君の話はいろはから聞いているよ。仲良くしてくれてありがとう」
その男はやけに嬉しそうな顔でそんなことを言う。
「いろはも、俺とばかり毎日一緒にいるより、同学年の子とも交流したほうが人生のためになるしね」
伊吹はその男の背後に虎が見えた。
まるで威嚇してくるようなオーラに体がガチガチに固まった。