18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
彼は、笑顔だった。
私も、笑顔になった。
だけど、胸の奥がぎゅっと痛くなって、妙に切なくて、少し苦しくなった。
これはきっと、熱があるせいだなんて、そんなふうに思えるほど私はバカでもない。
「ありがとう、伊吹くん……ごめんね」
私は彼の気持ちに応えることはできない。
彼もそれを知っている。
だから、せめて、精一杯の笑顔で答えた。
「伊吹くんに、そんなふうに想ってもらえて、本当に嬉しいよ」
「秋月……」
「わたし、前は伊吹くんに嫌われていると思っていたの」
「あ、ああー……それ」
彼は恥ずかしそうに俯き、そして続けた。
「秋月が近くにいると、すげー恥ずかしくて……本当は話したかったのに、どうやって声をかけたらいいか、わからなくて……いつも、小春を通して秋月のことを聞いていたんだ」
伊吹くんが、素直に自分の気持ちを話してくれる。
そんなことも知らないで、私は彼のことが苦手だから、部活でも会いたくないだなんて、思っていたんだ。
「ほんとに、ごめんな?」
「ううん。でも、よかった。このまま伊吹くんのことを苦手なまま卒業していたら、きっと一生そういう思い出になっちゃうから」
中学生の頃に仲良しだった子と気まずくなって、その子は別の高校へ行った。
苦い思い出は、ずっと引きずってしまうものだから。
「伊吹くんの気持ちを知ることができて、よかったよ」
「秋月」
「ありがとう」
「俺も」
伊吹くんは眩しいくらいの笑顔を私に向けてくれた。
「ありがとう」