18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
加賀さんが立派なカップで紅茶を運んできた。
そのあいだ、誰も何も言わず異様な空気が流れていた。
加賀さんが立ち去ったあと、おじさまがため息をついて話を続けた。
「遥、お前は秋月家の当主となる人間だ。今までは自由にさせてきたが、これからは一族や関係者と深く付き合っていく必要がある。これまで一族の集まりにも出席していなかったが、これからはそうはいかない」
おじさまの表情が強張っている。
今までの穏やかで優しい雰囲気しか知らなかったので、少し怖くなった。
「だが、披露宴でしっかり周囲に認識してもらえれば、今後はお前のことを皆認めてくれるだろう。そのためにも結婚式はしきたりに沿って行う」
遥さんはおじさまと目も合わせず、黙っている。
おじさまは困惑の表情で遥さんから目を離し、急に私を見て訊ねた。
「いろはちゃん、君は理解できるよね?」
「え!?」
「君も秋月の人間だから、事情はわかるだろう。私は遥が君との結婚を望んでいると聞いて正直安心したんだよ。他の家の女性では理解できないだろうからね」
おじさまは笑顔で鋭いところをついてくる。
この瞬間、理解した。
これは、私が違う家の人間だったら簡単に歓迎はされていないのだろうと。
私は何を浮かれていたのだろう。
遥さんとふたりで幸せだから、この家のことをまったく考えていなかった。
急に現実を突きつけられて、不安で鼓動がどくどく鳴った。