【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
 不思議そうにぱちくりしていた切れ長の目が、大きく見開かれた。

「あ……」

 言葉に至らない低い声が漏れ、いつもの穏やかな笑みが消える。

 賢人さんがまとっていた柔らかな気配が暗がりに溶けて、心臓が嫌な音を立てた。

 真顔になった彼にまっすぐ見下ろされ、胸が騒ぐ。

 ダメだ。

 これは、答えを聞いてはいけないやつ。

 そう思った瞬間、彼が口を開いた。

「――すまない」

 プライベートでは優しい笑みを絶やさない賢人さんが、見たことのない硬い表情を浮かべている。

 ショックだった。

 そして、そんな自分自身に衝撃を受ける。

 さも当然のように受け入れてもらえると思っていたなんて、おこがましいにも程がある。自分が恥ずかしい。

 視線を彷徨わせた後、賢人さんは言いづらそうにつぶやいた。

「まだ……待ってほしい」

 めずらしく歯切れの悪い口調に、勢いよく両手を振った。

「はい! 大丈夫です! すみません、変なこと言って」

 取り繕うように笑いながら、辺りの薄暗さに感謝した。

 これが明るいところだったら、耳まで真っ赤になっていることがバレてしまう。
< 85 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop