【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
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十二月二十四日。約束の金曜日でもあるその日は、透き通った青空が美しい冬日和だった。
午後三時に配られるケーキは毎年恒例で、殺伐としていたフロアがにわかに沸き立つ。
スノーマンやクリスマスリースのアイシングクッキーが飾られたプチガトーは、クールな社長からの差し入れとは思えないくらいラブリーなデザインだ。
実際、配って回っていたのは社長秘書の深水さんだし、もしかすると差し入れ自体、彼が選んだのかもしれないけれど。
可愛らしいケーキをデスク脇に置いたまま、気が付けば定時十分前だ。
いつもなら仕事が終わる時間が待ち遠しいのに、今は少しでも時計の針に留まってほしいと願ってしまう。
賢人さんとの約束は十九時。
考え始めると黒い霧で心が埋め尽くされていく。大丈夫だと思うのに、一抹の不安は拭えない。
もし別れようって言われたら?
私と付き合うことに疲れたと言われたら?
あるいは飽きたとか……
想像したセリフは全部、優しい賢人さんが言うはずのない言葉だ。
それなのに、彼のことを信じきれない自分がいる。