愛毒が溶けたら
「勇運!」
「兄貴……どうしたんだよ、その傷」
「そんなことより、勇運でしょ! 早くここから出ないと!」
兄貴は、辺りをキョロキョロ見回している。どうやって俺と子供をここから出そうか、そんな事を考えているんだろう。
「その隙間からなら、子供だけでも出せる」
「! ダメだ。勇運が先だよ。出血してる、早く血を止めないと」
兄貴は可能な限り腕を伸ばして、俺たちが通れるよう、大きながれきを手で取り始める。
その姿に……思わず笑ってしまった。
「はっ、今の発言。公私混同してんだろ?」
「……なんのこと?」
兄貴は、しらを切るように。俺と視線を合わせないまま、一度止めた手を再び動かす。
子供の意識が戻ってないことを再確認した後。俺は兄貴に、こんな事を話した。