お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「長かった。会いたかった、冬音」

「ゆ、勇運くん……っ」



少しだけ振り返ると、入院着に身を包んだ勇運くんがいた。

来る前は、やせてるかな?と心配だったけど、前のまんまの勇運くんで。その左腕には、包帯がグルグル巻かれている。



「冬音、こっち向いて」

「ちょ、ちょっと。勇運くん……っ」



勇運くんは私をクルリと回し、自分と向き合う形にする。勇運くんの腕の中で、見つめ合う私たち。

その近さに、久しぶりということもあって、思わず心臓が飛び出そうになる。



「ま、待って……。あの、もう調子は、」

「ん、全快」

「ウソばっかりっ」



左腕に包帯グルグル巻きながら「全快」だなんて。そんな分かり切ったウソを、堂々とつく勇運くん。

その瞳には私しか映っていなくて、そして……なんだか肉食だ。
< 361 / 398 >

この作品をシェア

pagetop