愛毒が溶けたら

「ごめん、もう無理。キスしたい」

「え?」

「じゃなくて、する」

「ま、待って。勇運くんっ」



私たちって付き合ってたっけ⁉と、口にする間もなく。

私は、勇運くんにより頬を掴まれ、そして、引き寄せられる。



「冬音……」

「あ……、」



真剣な目に、思わず引き込まれる。…………思えば、あんな大きな看板が落ちて来たんだ。

こうやって、二人で立って抱き合えているのが不思議なくらいで……。

今って、本当に現実だよね?と。目の前の勇運くんに、思わず震える手を伸ばす。



「ねぇ勇運くん……夢じゃ、ないよね?」

「……夢じゃない」



勇運くんが生きてたことが嬉しくて。
無事だったことが、幸せで。

改めて勇運くんの顔を見ると、思わず泣いてしまった。
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