愛毒が溶けたら

なんで勇運を頼らないといけないの?

そんな僕の不満を感じ取った父さんが、「そう顔をしかめるな」と。少しだけ困った顔をした。



「”勇”気を”運”ぶ。それが”勇運”だ。

挫けそうな守人に、勇気を運んでくれるように。勇運から勇気を貰った守人が、また誰かを守れるように――

そうやって兄弟寄り添って協力し合えるようにと。お前たちに、ぞれぞれ名前を付けた」

「ゆう……、しゅうと……」



改めて名前を繰り返す僕を見て、父さんは、またほほ笑んだ。

そして、涙が止まった僕と、そんな僕の上で眠る勇運を、交互に見やった後。大きくて温かい手を、それぞれの頭に置く。



「お前たちは兄弟だ。決して、一人じゃないからね」

「……うんっ」



その時、僕が僕である理由を、初めて聞いて……すごく嬉しかったんだ。

だから、僕に寄り添って眠る勇運と一緒に、父さんに負けないくらい大きく強くなろうって。
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